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2010年09月 アーカイブ

ゴッホを知る 5

サン・レミは、アルルの北東、25キロほどのところにあります。


ゴッホが入院したサン・ポール・ド・モーゾールの精神病院は、町から少しはなれた高原に、薄よごれた白っぽいけだもののように、ひっそりとうずくまっていました。


病院の前は、一面にオリーヴの林が続き、その彼方に、鋭い岩肌を見せた岩山がそびえています。


右手の少しくだったところに、何本か、くろぐろとした糸杉が見えました。


ゴッホは、この病院で、1890年の5月まで、1年を過ごしたのです。


彼は、ここで、周期的に襲って来る発作や、発作への不安に苦しみながらなおも制作を続けるのですが、その作品が、単なる衰弱と評しえぬものであるのはもちろん、それまでの仕事の継続でもなく、ある新たなる展開を示していることは、まことに驚くべきことでしょう。


そこには、アルル時代の作品が持っていたような、緊迫した、しかし一種の静誼につらぬかれた安定はもはや見ることは出来ません。


しかし、だからといってそれは、単なる崩壊、単なる解体ではないのです。


そういう崩壊や解体に身を委ねながらも、それを、言わば普遍的な生のリズムとでも言うべきものに導いているようなところがそこにはあります。


解体が、まさしく表現の契機と化しているようなところがそこにはあるのです。


「こんな絵を描くためには何度も死なねばならない」というのは、彼が、ヌエネン時代に、レンブラントの作品について語ったことばですが、ゴッホも、ここで、死のなかからよみがえっているように見えます。

ゴッホを知る 6

次のようなことばは、アルル時代のひまわりの絵の、あの見事な黄金色の背後に閉じこめられていたものが、今やゴッホの自覚的な主題となったことをうかがわせるでしょう。


「仕事は順調に進んでいる。


いま発病数日前に手がけた或る画布にとり組んでいる。


これは草を刈る人の習作で真黄色、恐ろしく厚塗りをしてあるが、モティーフは美しく単純だ。


つまり、ぼくは、この草を刈る人のなかに・・・


炎熱のもと仕事をやりとげようと悪魔のように闘っている朦朧とした人物のなかに・・・


人間は彼が刈る麦みたいなものだという意味で、また死のかげを見たのだ。


だから、l言わば、これは前に試みた種まく人とは反対のものだ。


しかし、この死のなかには、何ら陰響なものはなく、純金の光にあふれた太陽とともに、明るい光のなかでことが行われるのだ」。

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