ゴッホを知る 2
耳を切り落としたゴッホはすぐに病院に運ばれます。
しかし「着くとすぐに、また、彼の頭脳は狂乱状態に陥った」のです。
この耳切りに関しては、闘牛の際、闘牛士が、切り取った牛の耳を自分の「婦人」か、気に入った女性の客に贈るという習慣に由来するという説もあるようですが、そのようなことについて、あれこれ詮索しても仕方ないでしょう。
わたしたちとしては、他人を傷つけることと自分自身を傷つけることとの区別がつかなくなったひとつの精神状態を見てとれば足りるのです。
このときゴッホが運びこまれた市立病院は、ファン・ゴッホ病院と名前をかえて今も残っています。
先年アルルにでかけたときに、もちろんこの病院も訪れましたが、建物の様子も庭の眺めも、ゴッホが入院中に描いた作品に見られるものと、大して変わっていないようです。
わたしは、男子病棟の前の、ゴッホが画架をすえたという場所に立って、南仏らしい明るい陽に照らされてしんとしずまりかえった庭を眺めました。
すると突然、私の真後ろの窓越しに、何か話し合っている患者の低い声が聞こえてきて、ひどく心を動かされたものです。
100年近く前、あるいはこの同じ病室で、ゴッホが、薬のにおいや、熱っぽい病人のにおいに囲まれて横たわっていたということが、一種の物狂おしさをもって思い起こされたからです。
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